福岡市・中洲の元スナックママによる連続保険金殺人事件で殺人罪に問われ、1審・福岡地裁で殺人ほう助罪を適用され懲役3年6月の判決を受けた無職井手健一被告(37)(長崎県佐々町)の控訴審判決が22日、福岡高裁であった。
陶山博生裁判長は「1審が訴因変更せずに殺人ほう助罪の成立を認めたのは、訴訟手続きの法令違反がある」としたうえ、殺人ほう助罪の成立について「合理的な疑いが残る」と結論。1審判決を破棄して無罪を言い渡した。
井手被告は、元スナックママ高橋裕子被告(52)(殺人、嘱託殺人などの罪で無期懲役の1審判決を受け、控訴中)の長男の家庭教師をしていた1994年10月、高橋被告と共謀し、保険金目当てに2番目の夫(当時34歳)を包丁で刺殺したとして起訴され、懲役12年を求刑された。
1審判決は、井手被告が高橋被告からの殺害協力依頼を事前に断ったと認定。一方、殺害後、高橋被告に頼まれ、血のついた軍手を処分し、夫の死を確認するなどしたことから、「事後処理など頼まれた場合には協力してもいいと考え、高橋被告もそれを期待していた」と心理的なほう助を認めて殺人ほう助罪を適用した。
控訴審で、弁護側は「訴因変更がなく、殺人ほう助罪の成否について、弁護の機会が与えられず、防御権を侵害された」と無罪を主張していた。
陶山裁判長は「検察側、弁護側、裁判官とも事後処理を協力する意思があったか否か被告に質問していない」とし、訴訟手続きの法令違反を認めた。そのうえで「井手被告が事後処理を協力しようと考え、高橋被告も協力を期待していたことを認めるに足りる証拠はない」と判断。殺人ほう助罪の成立について「合理的な疑いが残る」と結論づけた。
また、殺人罪についても「井手被告が犯行前、高橋被告の依頼を断った時点で、共謀は解消されており、無罪の結論は変わらない」とした。
庄地保・福岡高検次席検事の話「判決内容を十分検討のうえ、適切に対応したい」